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KONO's Diary-休むに似たり



2010-11-13 [長年日記]

_ [映画] ハーブ アンド ドロシー

公式サイト

夫ハーバート・ヴォーゲル*1は元郵便局の集配係、妻ドロシー・ヴォーゲルは元公立図書館の司書。二人とも年を取って今は仕事はリタイアしている。現役時代は安月給の公務員だったが、好きだった現代アートの作品を少しずつ買い集めていて、ある日気がついたら世界でも有数の現代アートコレクション(4000点以上)を所有していた…映画『ハーブ&ドロシー』は、稀代のアートコレクターであるヴォーゲル夫妻を取材したドキュメンタリーである。

そのコレクションには、今は巨匠となったアーティストの昔の作品が多く含まれていて、それらをほんの数点売ればミリオンダラーにだってなれるのに、ヴォーゲル夫妻は一切売らず、(保管状態を良くするために)ナショナル・ギャラリーに寄付し、今も新婚当時の1LDKのアパートメントで質素に暮らしているという。

二人は純粋にアートが好きで、それらを生み出すアーティストが好きで、それらと関われる生活を大切にしているのだった。

コレクションの対象となった「ミニマルアート」や「コンセプショナル・アート」は、映画の中でも多数登場する。正直にいうと、ぼくにはそれらの作品の「素晴らしさ」はほとんど判らなかったのだけど、それでもヴォーゲル夫妻の生き方は実に素敵だと思った。自分が素晴らしいと思ったら、他の人がどう思おうがそれは素晴らしいものだ、という確信を、この夫妻は40年以上も持ち続けているからである。ぼくは既に人生の折り返し点も過ぎて、ずいぶん年を取ってしまっているけれども、今からでもヴォーゲル夫妻の「現代アート」に当たるような「自分にとって素晴らしいもの」を見つけて大切にしなければな、と思わされる。

映画はヴォーゲル夫妻やアーティストたちのインタビューを軸に、淡々と進んでいく。夫婦喧嘩を始めとしたドラマチックな展開はほとんどない。それでも観終わった後、「ああ、いい映画を見た」とちょっと幸せな気分になる。派手な展開がないこともあって、当初日本公開が危ぶまれていたのが、熱心なサポーターの人たちの尽力もあって何とか上映にこぎつけたとのこと。

今日はその上映初日だったのだけど、盛況でした。ぼくは初回に行って、30分ほど並んだけれども無事見ることができた。年配の夫婦のドキュメンタリーということもあって、観客の平均年齢はかなり高め。おそらく半分以上が40代より上で、60代以上とお見受けする老夫婦も複数お見かけした。そういう観客層も素晴らしいと思う一方で、本当は若い人にこそ見てもらいたい気もする。

最後になったが、素晴らしい映画の存在を教えてくれたさとなお氏に感謝。

*1 「ハーバード・ヴォーゲル」という表記を「ハーバート・ヴォーゲル」に修正。http://en.wikipedia.org/wiki/Herbert_and_Dorothy_Vogel 2010/11/15

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カバー画像はWikimedia Commonsより。
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