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KONO's Diary-休むに似たり



2009-02-22 [長年日記]

_ [] スペースシャトルの落日

アメリカのスペースシャトルは、実は技術の筋が悪く、プロジェクトとしては失敗だったと主張する本。

冒頭部にいきなり結論が書いてある。

  1. スペースシャトルは宇宙船として巨大な失敗作である。コンセプトから詳細設計に至るまで無理とムダの塊だ。
  2. シャトルの運行が続いた結果、宇宙開発は停滞した。
  3. スペースシャトルに未来があるとだまされた世界各国は、シャトルに追従し、結果として宇宙開発の停滞に巻き込まれた。

本編ではこれらをより判りやすくした主張とそれを裏付けるデータが展開されていく。

個人的には、スペースシャトル計画が「とても成功したとはいえない」という認識はその通りだと思う。ただ理由については、本書が主張するような技術的な面もおそらくあるのだろうが、最大の理由は「(アポロ計画と違って)"ソ連"と競争する必要がなかったから」ではないかという気もする。

ただ、最終章にある日本の宇宙開発に対する提言には全面的に同意する。以下、引用。

今の日本にとって本当に必要なのは、技術のステップを中抜きして、一気にアメリカやソ連と肩を並べる宇宙先進国になろうとすることではない。今できるところをできるところから、一歩一歩実現していくことではないだろうか。それがISSを有効利用することにも繋がるし、結果として安くて信頼できる宇宙輸送システムを入手することにもなる。

国際協力に参加しての技術蓄積だとか、二〇年後の再利用型宇宙機とか、二〇年後の独自有人かつどうというのは、結局のところ「今、手を動かさないことに対する言い訳」にしかなっていない。「宿題は夏休みの最後にやるよ」という子供と同じで、いざその時になってなにもできない可能性は大きい。

必要なのは、どんなに小規模でみずぼらしくとも自分の頭で考え、自分の手を動かして、今すぐ計画を始めることなのだ。むしろ計画は小規模で新たな技術開発をあまり含まない方が好都合だ。二〇年ではなく五年で結果を出し、二〇年間には五年の計画を四回実施して、その中で幅広い人材が育っているようにするべきだ。「夏休みの宿題にはすぐ手をつける」べきなのである。

この本は2005年の発刊で、その後日本の宇宙開発は「かぐや」「はやぶさ」等のすばらしい成果もあげている。ただ、有人宇宙飛行はまだスペースシャトル等の外国頼みで、2005年から状況は変わっていない。

ちょうど、今年の春頃に「宇宙基本計画」というのが出るらしい(この本の著者の松浦氏も啓蒙に努めている)。パブリックコメントも募集されるようなので、自分でも考えて何か意見を送るつもりでいる。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]
_ 増田光紀 (2009-08-21 20:24)

はじめまして。同じような意見を15年も前にSF作家の野尻抱介氏が「ロケットガール」で提唱しておりますね。<br>そもそも、宇宙船になぜ翼をつけるかというと、80年前のイゲン・ゼンガー博士も40年前のアーサーCクラーク博士も(水平打ち上げして、燃費の良いジェットエンジンと翼の揚力が生かせる高度までは普通の航空機として離陸し、空力限界の高度まで達すると初めてロケットを点火して加速し、酸化剤を節約するという構想だったはず。<br>でも、実際には膨大な量の推進剤の重さのためタンクを横に寝かせ場合の強度を維持すると宇宙船が重くなりすぎて離陸できない。<br>また速度順にジェットエンジン→ラムジェットエンジン→ロケットエンジンという3種類のエンジンを積むのも無駄なデッドウエイトになるという点も30年も前に佐貫又男氏が指摘してました。<br><br>スペースシャトルはそのような1970年代当時の技術的限界及びエネルギー削減の原理を一切無視して有翼飛翔体なのに普通のロケットと同じ垂直打ち上げした事自体に問題があると思われます。<br>ただ、いまだにラムジェット(スクラムジェット)の実現のメドが立たないことや横置きにしても破裂しないだけの燃料タンクの製造技術が確立されないことには下手した宇宙ロケットは100年経っても今の姿のままかもしれませんね。

_ kono (2009-08-23 00:29)

増田さんコメントありがとうございます。<br>野尻さんの本、読んでませんでした。今度探してみます。<br>個人的にはロケットは、再利用とか変な下心を持たずに地道に進化させていくしかないのかなと思います。<br>そして中長期的には軌道エレベータの実用化を待つしかないんじゃないでしょうか。

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カバー画像はWikimedia Commonsより。
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