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KONO's Diary-休むに似たり



2007-11-07 [長年日記]

_ [] ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか

一昨年に出た『ウェブ進化論』の続編のような本。著者自身、"福沢諭吉の『静養事情』と『学問のすすめ』が対になった存在であるのと同じ意味で、ウェブ時代の意味を描いた『ウェブ進化論』と対になった「その時代に生まれる新しい生き方の可能性」をテーマにした本"(あとがきより)という位置づけをしている。ウェブ(インターネット)がもたらす新しい時代に今後いやおうなく巻き込まれていく個人が、その中でどのような指針を持ち、生き延びていくべきかをつまびらかにしている。

主張の多くは、梅田さん自身がこれまで実践してきた内容をもとにしているので、(その後時代は流れているのだけれども)単なる空論という感じはなく、説得力がある。ぼくなんか若い頃は流されるまま生きていたので、梅田さんのようにもう少し戦略的に考えていれば良かったなぁと思うのだけど、既に四十歳を過ぎてしまい、後の祭りである。

まあ、今からでもできることをするしかない。

サバイバル術のうち、個人的に特にポイントであると思われたのは「これからの知的生活には資産より時間」であるとして、これと思うものを見つけたら時間の優先順位を変えてその対象に注ぎ込め、と勧めている点。確かに現在は勉強しなければならないことも多いし、娯楽だっていろいろあるしで、何をするにしても時間がもっとも希少な資源になっている。で、"「時間の使い方の優先順位」を変えるにはまず「やめることを先に決める」こと"だそうだが、ぼくを含むたいていの人はこれが難しい。ぼくの場合はぼーっとしている時間を減らすことができれば良いのだが……。

あと、梅田さんといえば「オプティミズム」で、本書でもこの旗は高々と掲げられている。ネットの一部ではこれに対する批判もあるが、特に若い世代に向けてのメッセージとして「オプティミズム」は実に正しい態度だと思う。ぼく自身、子どもたちに世の中のよしなしごとを語るときは、決して悲観的にならないし、仮に世の中に問題があるとしても、子どもたちの顔を見ていると「次の世代には解決できる」と思えてくる。「そんなの論理的な根拠がない」って言われればまあそうなのだけど、でもそうやって「次の世代を信じつつ、今ある世界をよりよくすることに全力をつくす」というのが責任ある大人の役割だと思うのだ。

閑話休題。一方で、現状のままではまずい、改善が必要と思われる点には警鐘を鳴らすことも本書は忘れていない。特に大きいのは、雑誌連載コラムでも取り上げられた、「インターネットの知的資産が英語ばかりで作られて、英語圏に生まれ育つことの優位性が今以上に増幅されてしまう、日本語圏のネット空間を充実させるには日本語圏に生きるわれわれ一人一人の意志にかかっている」という件である。だから「楽観主義ばかりで厳しい現実を見ていない」というような批判は的外れだと思う。

その他本書の内容の多くは、実は梅田さんの過去のブログ雑誌連載コラムで取り上げられたことがあるのだけど、それが一冊の本としてまとまった形で読めるというのは意義深い。特に本書の場合、序章で全体を概観した後で各論に入る等、書籍としての構成もかっちりしており、再読もやりやすい。欲を言えば、索引がついているともっと良かったか。

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